性感染症(性病検査)

性感染症性行為によって性器や口などから感染する病気の総称です。STI、性病と呼ばれることがあり、特殊な病気と誤解されていますが、20~24歳の女性の16人に1人、15~19歳の21人に1人が性感染症に感染しているという報告もあり、珍しい病気ではありません。性感染症には、適切な治療を受けないと不妊や胎児への感染や悪影響といったリスクを持つものも少なくありません。性感染症は特別な病気ではなく、誰もがかかっている可能性があるありふれた病気だからこそ、予防や治療がとても重要なのです。ご自分だけでなく、パートナーやご家族、将来の子どものためにも、「もしかしたら」と思ったらすぐにご相談ください。

性感染症の原因

広い意味での性行為によって感染します。通常のセックスの他に、オーラルセックス、アナルセックス、キスで感染するケースもあります。

主な性感染症

クラミジア感染症

通常のセックスでは膣から子宮内に感染し、オーラルセックスで喉に感染することもあります。潜伏期間は3日~1週間です。主な症状には、粘度の高いおりもの、下腹部痛、不正出血、左上腹痛などがありますが、自覚症状がないまま進行することもあります。喉に感染した場合は、喉の炎症を起こします。
進行すると卵管炎や骨盤内感染症を起こすことがあり、不妊や子宮外妊娠のリスクが高くなってしまいます。また、感染したまま出産した場合には、分娩時に新生児が感染して結膜炎や肺炎を起こすことがあります。
膣や子宮の粘膜内のクラミジアの有無を調べる抗原検査、血液中の抗体を調べる血液検査を行って診断します。抗生剤の服用による治療を行います。喉の感染の場合も同様の治療を行います。ほとんどの場合、10日程度の治療で治ります。

淋病

淋菌による感染症で、性行為の際の粘膜の接触によって感染します。性器だけでなく口に感染する場合もあります。潜伏期間は2日から1週間程度です。男性は尿道口のだだれ、膿、排尿時の強い痛みなどはっきりした症状が現れやすいのですが、女性は無症状のことも珍しくなく、症状があっても外陰部の腫れやかゆみ程度です。オーラルセックスで喉に感染した場合には、咽頭炎を起こします。
女性が感染して治療を受けずに慢性化させてしまうと、不妊や子宮外妊娠のリスクを上昇させてしまいますし、淋菌性膣炎、子宮内膜炎、卵管炎などの合併症を起こすこともあります。こうした合併症が起こった場合には、下腹部に激痛を起こします。パートナーが淋病になった場合、ご自分に症状がなくても必ず受診して検査を受けましょう。
女性の検査は、おりものを採取して淋菌の有無を確かめます。陽性だった場合には、抗生剤の注射や内服を行います。ほとんどの場合、1週間程度で治りますが、症状がなくなったからと治療を中止してしまうと薬剤耐性の淋菌が現れて治すのが困難になってしまう可能性があります。医師が治ったと判断するまで治療を続けましょう。

性器ヘルペス

ほとんどは性交渉によって感染します。口などにできたヘルペスからオーラルセックスで性器にうつってしまうこともあります。性器や口、目にも感染することがあります。感染後は症状がなくなっても体調不良や過労などで免疫力が下がった時に再び症状を起こします。若い世代の感染が増えている性感染症のひとつです。
潜伏期間は3日から1週間程度です。発熱や倦怠感などが現れ、その後に男性は亀頭包皮に、女性は外陰部や膣に小さな水疱ができます。水疱はもろく、すぐに破裂して潰瘍になります。女性が初感染した場合の症状は強いことが多く、歩けないほど痛む、排尿痛、リンパ節の腫れなどを起こすこともあります。再度症状が出現した際には、これほど強い症状を起こすことはほとんどありません。
水疱や潰瘍の視診で判断できることが多いのですが、判断がつかない場合には血液検査で調べます。抗ウイルス剤を用いた治療を行います。塗り薬や内服薬、注射などがあります。

尖圭コンジローマ

性交渉によってヒトパピローマウイルスに感染して発症します。
伏期間が長く、感染して2~3ヶ月後に、性器やその周辺に弾力性のあるイボができます。このイボは大きくなる・増えることが多く、カリフラワーのようになってしまうこともあります。かゆみや熱感、性交時の痛みなどの自覚症状を起こすこともあります。
イボの組織を採取し、顕微鏡で観察して診断します。イボの大きさによって適した治療法は異なります。小さいイボで数も少ない場合には、軟膏による保存療法が可能なこともあります。他に、ドライアイスによる凍結治療、レーザーや電気メスによる切除などが検討されます。

カンジダ膣炎

カンジダ・アルビカンスという真菌(カビの1種)が膣内に繁殖して炎症を起こしています。膣内の常在菌なので通常は増殖することがありませんが、過労や睡眠不足、糖尿病などの基礎疾患がある、抗生剤を服用している、妊娠しているなどで免疫力が下がっていると発症することがあります。環境の変化や季節の変わり目など、ストレスが多い時期には特に注意が必要です。また、ビデなどで洗浄し過ぎてバリア機能が下がって発症するケースもあります。
主な症状は、外陰部のかゆみや熱感で、ズキズキ痛むこともあります。特徴的な症状として白いおりものがあり、崩れた豆腐・カッテージチーズ・酒粕などに似ています。外陰部にただれを起こすこともあります。慢性化した際には外陰部のかゆみや痛みが残り、おりものが減る傾向があります。
おりものを綿棒などで採取して培養し、検査します。真菌には抗菌剤が効かないため、治療では抗真菌薬の膣錠を用い、外陰部には抗真菌剤の軟膏を塗布します。数日で症状が消えてからも1週間程度は治療を続ける必要があります。

トリコモナス膣炎

トリコモナス原虫という寄生虫が性行為によって膣内に感染して炎症を起こします。感染によって膣の自浄作用などのバリア機能を低下させ、他の感染症リスクも上昇してしまいます。女性には早期からある程度はっきりした症状が現れますが、男性の自覚症状がほとんどないためご自分の感染がわかったら、必ずパートナーにも検査と治療を受けるように伝え、再感染しないようにしてください。
トリコモナス原虫は尿路に入り込んでしまうことがあって、進行して尿道炎や外陰炎を起こすと強い排尿痛や歩行時の痛みなどを生じるため、早めに治療を受けてください。
主な症状は、外陰部のかゆみと、おりものの増加です。おりものは、黄色っぽい、緑がかっている、泡状になるなどの見た目の特徴があり、強いにおいを生じます。外陰部のただれや膣内出血を起こすこともあります。
おりものや尿を採取して顕微鏡で観察し、トリコモナス原虫の有無を確認します。感染が確認されたら、フラジールの膣錠と内服薬で治療します。フラジール内服薬は尿道に潜伏しているトリコモナス原虫の駆除にも効果があります。治療期間は2週間程度です。

梅毒

近年になって再び感染者数が増加傾向にあって、特に若い女性の感染が問題になっています。性行為やキスなどの際に、皮膚や粘膜の傷から梅毒トレポネーマが感染して発症します。輸血による感染、母親から胎児への母子感染もあります。
潜伏期間は10~90日と長く、平均すると3週間程度とされています。進行度によって4期に分けられ、それぞれ症状が異なります。
第1期潜伏期間の後、感染した部分にしこりのような初期硬結ができます。潰瘍になるケースもあります。痛みなどはなく、初期硬結は数週間で消えます。鼠径部のリンパ節が腫れることもあります。
第2期感染3ヶ月以降に梅毒トレポネーマが血流で拡がって、赤く特徴的な湿疹が顔を含む全身に生じます。リンパ節の腫れや発熱などの症状を起こすこともあります。また、梅毒性脱毛といって、髪の毛がまだらに抜ける症状を起こすこともあります。
第3期感染して2~3年経過すると、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような結節のゴム腫ができます。
第4期感染して10年が経過すると、多くの内臓に腫瘍を生じたり、心臓や血管、脳や脊髄といった中枢神経まで梅毒トレポネーマに侵されます。それによって、大動脈中膜炎、大動脈瘤、痴呆、進行麻痺などの重篤な症状が生じ、死亡に至ります。
現在では有効な治療が可能なため、第3期まで進行させてしまうケースはほとんどありません。
血液検査で診断しますが、感染後1ヶ月半から2ヶ月程度経過していないと正確な診断ができないため、陰性でも時間をおいて再検査が必要になる場合があります。陽性の場合には、抗生剤の内服や注射による治療を行います。

HIV(エイズ)

HIVはウイルスの名前で、エイズはHIVによって発症する病気の総称です。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、ヒトの免疫細胞に感染して、後天性免疫不全症候群(エイズ)を発症させます。感染しても適切な治療を続ければ発症を長期間抑制することができます。HIVは、白血球の1種で感染症などから身体を守る免疫機能を持ったCD4陽性リンパ球に感染して破壊するため、悪性の腫瘍や特定の感染症にかかりやすくなります。感染源は精液・膣分泌液・血液・母乳などで、性行為による性感染だけでなく、出産や授乳で起こる母子感染、注射器の使いまわしや輸血などによる血液感染があります。厚生労働省がエイズの診断基準として23の疾患を指定していますので、HIVに感染していて指定疾患のどれかを発症した時点で後天性免疫不全症群(エイズ)と診断されます。
HIV感染・発症・進行は、感染初期・無症状期・発症期という3つの段階に分けられます。
感染初期潜伏期間は2週間程度で、発熱・倦怠感・筋肉痛・リンパ節の腫れや痛み・湿疹などの症状を起こしますが、無症状のこともあります。症状があった場合も、数週間で治まります。
無症状期数年から10年くらい無症状のまま進行します。
発症期免疫機能が弱くなって感染症や悪性腫瘍を発症します。厚生労働省が診断基準として指定した23の疾患の発症がある場合、エイズと診断されます。
HIV感染の有無を調べるためには、HIV抗体スクリーニング検査を行います。感染直後には正確な結果が出ないため、3ヶ月以上経過してから再検査を行うこともあります。HIV抗体スクリーニング検査の結果が陽性だった場合には、確認検査を行います。その結果も陽性になったら感染が確定します。
完全な治癒はできませんが、HIVに感染していても抗HIV薬を使った適切な治療を続けることでエイズ発症を長期間抑制でき、以前と同じような日常生活を送れます。感染しても過度に恐れず、適切な治療を続けましょう。

性感染症の予防

性感染症の予防予防で最も重要なのは、性行為の際にコンドームを着用することです。着用のタイミングや方法が間違っていると予防効果がなくなってしまうため、しっかり、正しく着用してください。コンドームによって粘膜や体液の接触を防ぐことは、性感染症予防に大きな効果を期待できます。経口避妊薬を飲んでいるなど避妊にコンドームが必要ない場合も、必ず着用しましょう。
ただし、コンドームを着用していても100%性感染症を防げるわけではありません。そのため、不特定多数との性交渉や、パートナーが多い相手との性交渉は感染リスクを高めてしまいます。また、ご自分が感染していることに気付かずにいると、大事な方にうつしてしまう可能性もあります。性感染症の症状は男女でかなり出方が異なるため、パートナーの感染がわかったら必ずご自分も検査を受け、またご自分の感染がわかった場合も、必ずパートナーに検査を受けるようすすめて再感染を繰り返さないようにしましょう。早期に適切な治療を受ければ、ほとんどの性感染症が深刻な問題を残さずに治すことができます。
性感染症の中には、身体や自然に存在するありふれた常在菌によって発症するものもあるため、性行為前後に清潔を保つことも感染予防につながります。生理中はリスクが高くなるので性行為をしないようにしてください。また、屋外での性行為も感染リスクが高くなります。性行為前後のシャワーや入浴、性行為前にトイレをすませておく、性器が傷付くような行為をしないなどを心がけましょう。

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